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あたらしいかぞく
「また昨日の連中がいるかもしれないし、送って行こうか?」
その日の放課後黒刃が帰ろうとしていると、敏朗が話しかけてきた。
黒刃は今日1日で、沢山のクラスメイトと話すことが出来た。今までは学校にいても人と話すことがほとんどなかったせいか、帰る頃は、話すきっかけをくれた敏朗に感謝したいくらいだった。
「本当に!?ありがとう。いつも一人で帰っていたから嬉しいよ。」
敏朗の目には、黒刃の後ろに花畑が見えるようだ。
★☆
「今日は本当にありがとう!みんなといろいろお話できて楽しかった。」
「俺のおかげなんかじゃないよ。明日ももっと積極的に話したらいいさ。…それにしてもさ、黒刃。学校の近くで部屋を借りた方がいいんじゃないか?」
帰りながら敏朗は気になっていたことを聞いてみた。毎日危ないところを登下校するのなら、バイトしながらでも学校の近くに住むほうが安全じゃないか?
「うーん。そうなんだけど、今まで学校なんて通ったことなかったし、一人暮らしするよりも知ってる人と一緒に暮らす方が安心かなって…。」
「……え??」
この国には義務教育がある。敏朗ももちろんその義務教育の過程を終わり、今の学校に進学したのだ。
学校に行っていなかったということは、黒刃は…
「敏朗君だから言うんだけど…最近毎日のように報道されているからね。
…僕は
紅国の出身
だよ。」
時が止まったような気がした。
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