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その後、敏郎は黒刃を送っていき家に帰宅した。
紅国と言えば三年前に帝国に吸収された緑豊かな国で、人口は帝国の十分の一もいない小さな国だった。“紅軍(こうぐん)”という軍隊が戦争中、帝国と戦っていたが、戦後はテロを行っているグループの半数がその紅軍のメンバーだと言われている。
★☆
「…はぁ~。」
「どうしたんだ、敏。お前がため息なんて珍しい。明日は雨が降るかもな!…自警団の事か?」
敏朗の父親は、帝国の防衛軍の幹部だ。自警団の団長の上司にあたる。
「俺にそんな力はねぇよ…いや、友達の事。昨日今日家まで送ってった黒刃てクラスメート、紅国の出身だって。」
「あぁ、夕方お前の隣歩いてた眼鏡をかけた子か。男の子だったんだな。それで何で迷ってんだ?お前だって俺(帝国)と操(吉良国)のハーフじゃないか。」
敏朗の父親は、手を髭の生えた顎に当てて言った。彼は生粋の帝国人。母親の操(ミサオ)は数十年前に帝国に吸収された吉良国の人間で、結婚する時は物凄く反対されたらしい。
「今は帝国だけの血筋なんてあまりないぞ。」
「うん…。そうだな!!…って、あれ?親父、夕方見たって…。」
「見回りしてた時にな。パッと見はあまり印象に残らないような子だったが、よく見ると可愛い子だったなぁ。付き合ってんのか?」
「いやいや、さっき友達って言ったじゃん!それに俺達男同士だぞ!?」
「その辺の子より綺麗だし、お似合いだと思うぞ?あんな可愛い子だったら娘…じゃない、息子に欲しいくらいだな。かなり強そうだったし。」
「は?」
何でも父親が見ている事に敏朗は気付かなかったが、黒刃は不思議そうに見返してきたらしい。
いや、だって、とあたふたしている息子を見て、もうそんな年なのかと大笑いする父親の姿がしばらく見られた。
★☆
「…おはよ。」
翌朝、父親に言われた事が気になって眠れなかった敏朗は目の下に隈が出来ていた。
黒刃を何故送っているのか訳を話すと、うちに居候してもオッケーだぞ!と父親は言っていた。母親もそんなに可愛らしい子ならいつでもいいと言っている。敏朗の妹は部活の合宿で今はいない。
「とりあえず、迷惑じゃなかったら今日うちに連れてきなさい。今日仕事ないんでしょ?」
母親の言葉にまたため息が出た。
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