第1.5席 占星師、運命告げるのこと。

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「―――流星、ですか?」 緑に囲まれたある村の中心の屋敷、その一角から少女の声が響く。 「そう、流星」 その少女に会い対するは、少しばかり身なりが良い占い師。 少女は横に束ねた美しい黒髪を揺らし、もう一度声を響かせる。 「菅蕗(カンロ)殿、全てをお聞かせ下さい」 「良いわ、もう一度だけ言って上げる。 『戦乱蔓延るこの時代……桃園に流れた、一筋の流星……その星、碧く輝く宝剣を携え戦乱斬り裂く……そして碧き風流れ、平の和を運ぶ……』」 菅蕗と呼ばれた占い師は月琴を奏でながらそう告げた。 少女は真摯に受け止め、何かを決めたような目をしていた。 「ありがとうございます、菅蕗殿」 その後、占い師が帰ると言い出し、少女は外に出て見送る事になった。 「ううん、礼なんて要らないわ。この大陸一の星詠みは、名高い“美髪公(ビハツコウ)”を拝めた目を持てただけで、十分よ」 微笑みながらそれだけ言い、菅蕗は月琴をしまった。 「……皆に知らせねばな」 一言そう零すと、少女もまた菅蕗に笑い掛けた。 「あと最後に、星が来たらこう言って貰える?」 「言伝ですか?解りました、承りましょう」 「そう、ありがとう。それはね――――」 空には満天の星が絶える事無く輝いていた。
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