774人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
「―――流星、ですか?」
緑に囲まれたある村の中心の屋敷、その一角から少女の声が響く。
「そう、流星」
その少女に会い対するは、少しばかり身なりが良い占い師。
少女は横に束ねた美しい黒髪を揺らし、もう一度声を響かせる。
「菅蕗(カンロ)殿、全てをお聞かせ下さい」
「良いわ、もう一度だけ言って上げる。
『戦乱蔓延るこの時代……桃園に流れた、一筋の流星……その星、碧く輝く宝剣を携え戦乱斬り裂く……そして碧き風流れ、平の和を運ぶ……』」
菅蕗と呼ばれた占い師は月琴を奏でながらそう告げた。
少女は真摯に受け止め、何かを決めたような目をしていた。
「ありがとうございます、菅蕗殿」
その後、占い師が帰ると言い出し、少女は外に出て見送る事になった。
「ううん、礼なんて要らないわ。この大陸一の星詠みは、名高い“美髪公(ビハツコウ)”を拝めた目を持てただけで、十分よ」
微笑みながらそれだけ言い、菅蕗は月琴をしまった。
「……皆に知らせねばな」
一言そう零すと、少女もまた菅蕗に笑い掛けた。
「あと最後に、星が来たらこう言って貰える?」
「言伝ですか?解りました、承りましょう」
「そう、ありがとう。それはね――――」
空には満天の星が絶える事無く輝いていた。
最初のコメントを投稿しよう!