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時は戦国時代
朝も早い頃、安土城の天守閣を歩く豪華な着物姿の少女がいた。
彼女は腰まで延びた髪を嬉しそうに揺らしつつ城中に響き渡る声量で叫んだ。
「さぁるぅ~。猿はおらぬかぁ~」
子供らしい可愛い声を聞き付け、猿と呼ばれた青年が自室から顔を出した。
「姫様。それがしならここに…」
猿と呼ばれた青年の名は秀吉。
後に天下統一を果たした、あの豊臣秀吉である。
「あの~姫様…さすがにそのような大声で呼ばれると恥ずかしいのですが…」
その言葉を聞いた少女は途端にムッと怒った顔になり反論した。
「誰のせいで大声を出したと思っておるっ!猿のせいじゃぞっ!それに、私を『姫様』と呼ぶなと何度言わせれば気が済むのじゃあ!」
どうやら、かなりのご立腹の様子である。
「しかし、姫様も立派な将軍。それがしのような者においそれと名前を呼ばれるのは不服かと思い…」
この少女。見た目も歳も今で言えば小学生ぐらいなのだが、一度戦があれば鎧に身を包み勇壮に戦場へと赴く立派な将軍なのである。
「口答えするなぁ!私の事は名前で呼べと言ってるじゃろう。それに、猿になら呼び捨てにされてもいいって思っておるし…そのぉ……」
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