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「の、信長様!それがしはまだ着替えてもしておりませぬ。少しお待ちをっ…」
……パサッ
「…あっ。」
その時、秀吉の袴が急に動いた拍子で地面にずり落ちてしまった。
純白のふんどしが…丸見えだった…
『いっ、嫌ぁぁぁぁ~~~~!!!!』
ばっち~~~~~んっ!!!
城中に信長の悲鳴が響いたと同時に乾いた張り手の音が響いた。
「痛あぁぁぁぁ~~~!!!」
これが俗に言う
『履かぬなら はたいてしまえ ほととぎす』である。
『鳴かぬなら 殺してしまえ ほととぎす』は上記の言葉が長い年月を掛けて変化したものである。
~安土城・城下町~
真っ赤になってしまった張り手の跡をさすりながら秀吉は小走りで、とある神社へと向かっていた。
ひときわ大きな鳥居があるその神社は城下町に出掛けるときの信長との待ち合わせ場所である。
角を曲がると、そこには髪を二つに縛り、柄の少ない質素な着物に身を包んだ信長が鳥居の所で佇んでいた。
この服装は信長のお忍び用の着物である。
「信長様っ!」
名前を呼ぶと信長は嬉しそうに振り返った。
「猿!やっと来たか。まったく、主人を待たせるとは本当に不届者じゃな。」
「申し訳ありませぬ。信長様」
深く頭を下げる。
「あっ、いやっ…別にそこまで謝らなくてもいいのじゃが…」
まだまだ深く頭を下げる。
「いえ!信長様を待たせるとは」
「だっ、だからもう良い!ほらっ、行くぞ!!」
気付くと周りには子供達やら道行く大人達がこちらを好奇の目で見つめていた。
視線に気付き恥ずかしくなった信長は秀吉の手を掴み逃げる様に走り出した。
「…信長様!?」
…この時初めて二人は手を繋いだ。その指先からは心臓の音が伝わって来る。
この大きな心臓の音はどちらのだろうと秀吉は思った。
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