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発車音と共にドアが閉まり、ホームを出ていく電車を見送る。
私は、見知らぬ駅のホームへ下り立っていた。
寂れた無人の改札を抜ける。
駅舎を出ると、そこには、知らない筈なのにどこか懐かしい、そんな町並みが広がっていた。
「私……何でこんなところで降りちゃったんだろ……」
私の住む市の隣町。 と言っても、ここから歩いて帰るとなれば1時間以上は掛かる。
その上、これと言って売りの無い、ただの田舎町。
普段なら、この駅で下りるなんて有り得ない。
けれど、私は無意識の内に、この辺鄙(へんぴ)町に、“非日常”を望んでいたのかも知れない。
そう考えると、私は妙に納得してしまった。
それは、私の胸が、“何か”を期待して高鳴っていたから。
「よし!」
私は、自分に気合いを入れて、見知らぬ町へと歩き出した…………
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