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私は、路地の奥の店――店名は看板がハゲていて読めない――の、入口。
曇り硝子が嵌め込まれたガラス戸の前に立った。
「…………」
入口の前に立った。
「………………」
入口の前に……
「……立ったのに……なんで開かないのよ!!」
――ガン! ガン! ガン!――
気が付くと、私の足が、うんともすんとも言わない硝子戸へ、物理的制裁を加えていた。
途端、ガラガラと音を立て、ガラス戸が開いた。
(なによ。やれば出来るじゃない)
漸(ようや)く開いた硝子戸に満足していると。
「いらっしゃいませ。お客さん。この扉、自動ドアじゃないですよ」
そんな事を言いながら、店員らしき男が姿を表した。
(くっ!……それならそうと、早く言いなさいよ! 気が利かない!)
ふと見ると、男の後ろから、店内の様子が見える。
(あれは……本……よね……)
覗き見た店内には、古ぼけた本が――いや、古ぼけた本しか見えなかった。
(なんなの、この店?
あんな汚い本しか無いの?
う~ん。何かこう……見たことも無い、怪しい置物とかが並んでる様な……そう! 魔法のアイテムが置いて有る様な、そんな骨董店かと思って期待したのに……これじゃ、ただの古本屋じゃない……)
「……つまんない」
(あ。でも、これだけ古い本が有るんだから、魔法の本とかなら……有るんじゃないかな……?)
そう気持ちを切り替え、私は店内を物色する事にした。
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