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家を出ると、いくつもの坂が真っ先に目にはいる。
「――はっはっはっ」
マトは坂を一気にかけあがり
ある公園へと寄り道をする。
この街は山に囲まれた盆地で
坂がいたるところにあり
この公園も、坂を上がった先にあるため
街を一望できる良いスポットになっている。
新しい学年、学期に相応しい
満開の桜が咲き誇り、風に乗って流れていく。
特に変わらない街だが、
マトはこうやって街を眺めるのが好きだった。
「すぅ――はぁ~」
深呼吸をして爽快な空気を吸い込む。
「……あっ」
マトは声をあげると、おもむろに
携帯を取りだしカメラ機能を使って写真を撮った。
―――カシャ
撮れた写真を見てマトは
「にひっ♪」と笑い、
データを保存した。
その時にチラリと視界に入る携帯の画面に表示された時刻。
そして気付く。
「ぅあぁぁっ電車電車!!」
急いで駅へと走る。
切符を買うのももどかしく、
走って改札を抜ける。
―――プルルルル
電車の発車予告音が鳴りはじめる。
「ぅひっ」
マトが駆け込みで乗り込むと同時に閉まるドア。
「ふぅ~…」
マトは安堵のため息を漏らす。
電車の中を見ると、自分と同じ制服を
着ている女の子たちがちらほらいた。
マトは流れていく景色を眺めながら次の駅を待った。
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