過去と未来

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少し歩くと、開けた場所に出た。 広場のようになっていて、円上になった草原に、日光が差しこむ。 「ギルティ!!」 広場に立ち、ウィルは声をあげた。 すると。 キュイ!! キュイ!! 鳴き声が響き、なにかがこちらへと走ってくる。 それは、大きな鳥だった。 地面を踏みしめる爪、太いくちばし。 人が乗れるように、背中に鞍がついていた。 羽は、森より鮮やかな、エメラルドグリーン。 キュイ!! 「わり、待たせたな」 ギルティと呼ばれた鳥は、嬉しそうにウィルに頭をすりつける。 「ヘイトは?」 キュ。 「そか」 くちばしで指した方には、同じく大きな鳥の姿。 こっちはオレンジ色の羽をしていた。 「よし、じゃあ合流場所に戻るぞ」 後ろを振り返る。 結局、ティアはエドにパンを分けてやらなかったらしい。 エドがぶすっとふくれていた。 「来たときと同じな。エドはヘイトに乗って、ティアは俺と…」 途端。 「えー!?」 ティアが、全力で嫌そうな顔をする。 「俺、1人で乗りたい!!」 「だめや、お前どっか行こうとするやろ」 「せぇへんもん!!」 否定するティアに、しかしウィルはしれっとして、 「だめ」 「けちー!!」 「けちで結構や」 と、簡単にあしらいながら、自分はひょいとギルティに乗った。 「あいつらと分かれたとこまで頼むな」 キュ~イ。 愛らしい目で、ギルティはこくんと頷く。 「ほら、来い」 「む~…」 まだ不満はありそうだが、しばしのあと、ティアもギルティに乗った。 ウィルの腕の中にすっぽり収まると、またパンをかじり始める。 「用意えぇか?」 「おー」 エドが答える。 「よし、行け!! ギルティ!!」 キュイっ!! そして3人は、仲間の待つ場所へと向かった。 …… 「現在」という時間。 それは、「未来」のためであり、「過去」のためでもあり。 彼らがこうしている理由… それは。 今から、数日前にさかのぼる…
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