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―変わってないんだな…
懐かしい想いと共に、忘れたい記憶までもが蘇る。
小太郎は一歩踏み出し、手を差し伸べようとしたが、
踏み止まりその手を下ろした。
―…そう、もう俺達はあの頃には戻れない。
「お前に一つ、言いたいことがある。…俺を殺すのは、それからにしてくれ。」
余りにも淡白に自らの死を受け入れている佐助に、哀しげな表情で首を横に振る小太郎からはもう、殺気は完全に消えていた。
―…バカ野郎。
佐助はこの時、気付いた。
コイツはまだ『人形』なんかじゃない。今まで何故気付か無かったのか…
もし『人形』になってしまったのならば、
「お前…『喋らない』んじゃなくて、……『喋れない』、んだろ…?」
ほら、口がまた…
自分でも不思議には感じていた。『誰も声を聞いた事が無い。』など、あり得るのか、と。
『人形』だからなのか、と無意識に納得していたが…
―辛かった、だろうな…
誰にも言えず、話せず…
だがそれは、『人間』だからこそ、だったんだ。
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