幕間で考える役者たち

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     12時を目前にして、おそらく優勝者は納呀に決まりであろうと思われたし、現に関係者もその方向で進行を考えていた。  けれども、当の納呀本人はといえば、Fanfareが鳴り響き、代表者が大仰な優勝Trophyを抱えて彼の鳥籠の前に来ても尚、それを、他人事のように眺めているだけだった。 (何だか夢を見ているようだな。次の瞬間には、ぱっと何もかもが、消え失せるのでは……)  さあ鳥籠をお開きください、と代表者が笑顔で言う。地下室の視線は今や納呀ただ一人に注がれているのだった。  納呀はポケットから鍵を出した。 (大体、人間の顔なんて眼と鼻と口と……が、定まった位置に面白くもなんともなく、ただ並んでるだけで、それほどの違いはないし、美しいだの醜いだの、そんなのは)  かちり、と鳥籠の内側に取付けられた鍵穴に、鍵を差し入れた……そのとき、ふと地下室の照明が、消えた。  あっと誰かが言った。  真暗闇―― 「貴嬢、貴嬢」  暗闇の中で月兎が、有依の頬を軽く叩いた。彼女は、まだ月兎の肩に自身の頭を預けて、寝息を立てている。 「ん……」 「起きてください」 「んん」 「貴嬢、お待ちかねの」 「ん」    「It's Show time.月泥棒の登場ですよ」  真暗の地下室には、次第に混乱のどよめきが広がりつつあった。  
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