幕間で考える役者たち

6/8
前へ
/210ページ
次へ
     目の前で、はらはらと散ってゆく紙吹雪を見ながら、納呀は今夜の市街を俯瞰している。  しかしやがて、灼けるように熱い自身の頬に気がついて立ち上がった。 (……あ、)  やはり今夜の納呀は心より躯に感情が先行しているらしい。 (……あ、あ!)  納呀は唇に指先を当てて必死に先刻のことを回想しようとした。  勝手にひとを連れ回した揚句、B級映画さながらの、薄ら寒い捨て台詞を残して消えやがった、あの似非紳士。  あれは、……  あれは……   (baiser?)  また納呀は腰に力が入らなくなって、その場に座り込んでしまった。  
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加