Gossip!

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     葉山は荷物を自分の机に置いてきてから、また御園に詰め寄る。 「御園記者、でもこれ、かなりよく撮れてるでしょう。ほら月泥棒」 「うーん。そうだな、まるでB級映画の宣伝広告さながらだ」 「でしょ!」 「しかしだめだな」 「ええー!」 「それどころか、たぶん月泥棒の記事なんて当分は載らないぞ」 「なんでなんで!」 「無論それを上回るScoopがあったからだ」 「え?」  そのときやっと葉山は室内の無人を訝り始めたのだった。 「何かあったんですか」 「殺人事件」 「へえー」 「殺されたのは――」  語られたその著名財界人の名前に葉山は目を見開いた。 「殺されたんですか?」 「そうだ」 「は――それは驚きですね」 「もっと驚きなのはその殺され方」 「ん」 「Knifeで刺殺。それがなんと1000本だ。まるで黒髭危機一発だな」 「うえー」 「――で、記者はみんな出払って俺は留守番」 「そうだったのかあ」 「そうなんだよ。この間抜けめ」 「なんだとう!」 「馬鹿丸出しだなあ君は本当に。頭の中お花畑なんだな一年通して」 「なんだとちくしょうじゃあ私も取材行って来るよ今から今から!」 「止せ間抜け。交通事故を見ただけで貧血起こすくせに」 「ぐう」 「遺体は運ばれたがまだ街灯は血液でべったりだぞ」 「街灯?」 「そう。1000本のKnifeで刺殺された遺体は、街角の街灯に串刺しになってたんだよ」 「なんですかその地獄絵図は……私そろそろ限界なんですけど……」 「まったく稀に見る猟奇殺人で……お前なぜ手を握るんだ」 「いやなんとなく……」 「しかもまだ犯人は逃走中だから……肩を寄せるなよ」 「なんか怖くて吐きそうなんですけど……」 「知らん」  
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