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電話は鳴らない。御園はいつでも受話器を取れるようにしながら、原稿用紙の裏に落書きをしている。
「あのう……御園記者」
「何だ」
「私ちょっと……ご、御不浄に行きたくなっちゃったんですけど……」
「ここは小学校か。行きたいなら勝手に行け」
「いやでも怖いじゃないですか」
「何が?」
「ほらその猟奇殺人犯とか出てきたら――」
「オバケか何かと勘違いしてないかお前?」
「でも、もしかしたら」
「そのときはScoopだ。何がなんでも捕まえて来いよ、そしたら一面記事どころかワイドショーに出れるぞ」
「やだやだ殺されるちゃうよー!」
「間抜け」
「お願いしますついてきてください」
「便所くらい一人で行けよ!」
「怖いよう」
「俺は電話番しないといけないんだ」
「守さん……!」
「急に下の名前で呼ぶなよ!」
「まったくもう! そんなこと言って私が惨殺されたらどうするんつもりですか!」
「そんなわけあるか!」
半泣きで自分の腕を引っ張る葉山をあしらっていると電話が鳴った。
――RRRRR!!
「うぎゃあ!」
「電話だ馬鹿。……はい御園です。……ええ未だ逃走中と……凶器? 黒いKnifeですか。柄だけでなく刃も黒いんですね。全て漆黒のKnife……」
「うわあああああ何その悪魔みたいな凶器は!」
「つまり凶器は特製というわけで……え? ああ後ろにいるのは葉山記者です。……あとではったおしておきますから……はいどうも」
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