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その後、何度か電話があり御園はさまざまなことをメモした。
真剣な面持ちでそのメモを見ながら、ぐずつく葉山を手洗いまで連れていく。
出て来た葉山はびくびくしながら御園の腕に縋りついた。
「で、でも、あれですよね御園記者。そんな大胆な犯行をやった奴はすぐに捕まりますよね。きっと現場は証拠ありまくりで翌朝には逮捕で死刑ですよね」
「さあ……大胆と言えば月泥棒も大胆だったな。まだ捕まってないが」
「警察は無能ですねー」
「しかし特製凶器、猟奇殺人、そしてそれを誇示するかのような殺害現場……とくれば、これは典型的なcaseだな。当然、連続殺人に発展する可能性がある」
「まじで勘弁してくださいよ。私、先月から一人暮らし始めたばっかりなんですよ……こんな身近で猟奇殺人とか都会やばすぎますよもう!」
「馬鹿言え。財界の大物が被害者なんだぞ。だったら第二第三もそれなりの人物に決まってる。我社の社長ならともかく、お前なんて狙われないから安心しろ」
「ううう怖くて立ってらんない」
御園は編集室に戻ると鞄に書類を入れ、灰皿の中身をゴミ箱に捨てた。
外套を羽織る御園に葉山が声をかける。
「何してるんですか御園記者……」
「何って帰るんだよ葉山記者」
「電話は?」
「もういいってさ。みんなそのまま解散だ」
「ううう」
「何だよ」
「お願いだから送ってってください」
「……まあ一人で帰すわけにもいかないか」
御園と葉山は銀月社を出た。
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