Gossip!

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     なぜか後部座席に座ろうとした葉山の頭を「タクシーじゃないぞ」と叩いて助手席に座らせ、御園は車を出した。 「うううありがとうございます……辞書の『優しい』という項目には《御園守》と書いておくべきかもしれませんね」 「そんなことはないがお前どこに住んでるんだ」 「shuffle Town」   「シャッフルタウン? どこだ」 「N県で……私の実家なんですけど」 「何で実家に帰る気満々なんだお前は」 「だって猟奇連続殺人が歩いて数分のとこで起きるなんてもう無理」 「だからって里帰りするなよ」 「あ、……私のマンション過ぎました今」 「何? ここか」  急停止して振り返る。大きくも小さくもない、ごく普通のマンションがそこにある。 「それで……」と葉山が言った。 「鍋でいいですか」 「何が」 「夕食を」 「別に君の夕食の献立がなんであろうと俺はどうでもいいから」 「え? 泊まっていくんでしょ」 「え?」 「発泡酒しかないですけどまあ我慢です」 「俺は自宅に帰ります」 「じゃあ私が御園記者の家に……」 「なぜ……」  しばらくの沈黙の後に葉山は深く頭を下げて言った。 「もう私がお金払うからお泊りしてください」 「お前さんは何を言ってるの?」 「いやいや御園記者、殺害現場って街灯並木だったんでしょ?」 「そうだよ」 「ここから徒歩15分じゃないですか! 何考えてんですかもう」 「知らないよ。怖いなら友達の家にでも行けばいいだろうが」 「うううLetterick Townに友達いないんですう」 「俺は帰る」 「女性を家まで送ったらそのまま上がり込むのが常識でしょうが!」 「ひええ」 「ほらほら早く! 鍋もあるから!」 「何だよお前! べつに付き合ってるわけでもないのに」 「じゃあもう付き合ったらいいでしょこの際!」 「なんだと」 「猟奇殺人犯に惨殺されるくらいなら御園記者と結婚する方がましですよもう」 「えええ」  
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