白黒の日々

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 それは納呀を抱いてみればわかるのだった。彼は平生、躯に幼い微熱を宿していて、常に平熱が若干高く、そのためにたいへん寝つきがよい。  その夜、Sylvesterは窓辺に椅子を置いて、納呀を看ていた。長い黒髪が寝台から零れている。微かな香りがする。月が明るい。部屋が暗い。……  Sylvesterは静かに眼を閉じた。月影。明るい闇の中で記憶の糸が解け始める。――広大な庭園と歪な部屋。それらを繋ぐ無数の回廊。それはimageの欠片。  
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