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あるとき、晩餐会のために料理人のみならず数多くの侍従たちが準備に追われていると、門番が侍従長を訪ねた。来訪があったという。
しかしそこには掃除中のSylvesterしか部屋にいなかったので、彼女が代わりに応対した。
来訪者は古書店からの使いだった。
「ご依頼の品をお持ち致しました」と、使者は言った。
「申し訳ありません。本日はたいへん取り込んでおりまして、またの日に願います」
「ええしかしこの品は」
使者はそう言って包みを出し、掲げて見せる。
「すでに御代は戴いておりまして、できれば早急にとのお話ですから、お忙しい中たいへん恐縮ではございますが」
「では、……図書係に」
「いえ直接、Ilias様へお届け下さいますよう」
「え?」
「どうぞよろしくお願い致します」
そして使者は帰って行った。Iliasという名は、無論Sylvesterも知っている。なにしろ当主の御子息だから。月の病が重いために【西棟】の最上階に棲み、外の世界はおろか、部屋からも出たことがないという方である。
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