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【西棟】に関する不文律は多くある。
普段は言葉を隠して、「あの場所」「あの方々」と呼ぶほどであるが、早急の用件ということなのでSylvesterは、急いで西棟へと向かった。
本館三階の西側は、使われない部屋が多く、静かである。晩餐の準備に忙しい雰囲気もここまで来ると薄れてしまっていた。足音や声が遠く聴こえる。鍵番から借りた銀の鍵を持って、どきどきしながら回廊を渡った。
【西棟】の扉は外から施錠されており、中に棲む人々は自由に外出することを許されてはいない。
……
棟内には細長い廊下が伸びていた。薄暗く、目の覚めるような緋色の絨毯が敷いてある。
不気味なほど静かだったが、ふと階下から激しい咳が聞こえた。そして乱暴に扉を叩く音が続き思わずSylvesterはその場に立ち竦む。しばらくするとそれは止んだ。
☆…★Ilias☆…★
階段を上がる。最上階の扉がそこにあった。
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