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久しぶりに人間らしい会話が出来た。しかも、牧村と。生きてるのなんて辛いだけだと思っていた。でも、違った。
他人と関わることでこういう喜びも生まれるんだ。
どんなに辛くても誰に虐げられても、強く生きていこう。一人でも僕と向き合ってくれる人が居る 限り。中田はそう心に誓った。
「そういえば聞きたいことがあって…」
「なんデスカァ?遠慮しないで聞いてくだサーイ?」
牧村はニッコリ笑って続けた。
「なんで中田くんって見た目が外人なの?両親は日本人なのに。」
え?中田は耳を疑った。牧村はなおも続ける。
「なんで中田くんの両親は中田くんをうっとおしそうに扱うの?なんで日本人なのに外人訛りなの?なんで友達がいないの?なんでいつも寝た振りしてんの?」
中田は頭が真っ白になりながら牧村の顔を見つめていた。笑顔だ。よく自分に向けられていた笑顔。嘲笑。
「あはは、やばいぞ~!泣くか~!?」
「ヒヒヒッヒッ…腹痛てぇ~!中田選手固まっております!ハハハハ…」
気付けばクラス中の視線が中田に集まっている。何かの罰ゲームで牧村が話しかけてきたのか。中田は状況を掴み始めていた。
「もう~、あたしジャンケン弱いからマジ最悪。中田~、なんで生きてんの~?」
牧村のトドメの一言が中田を襲った。ズキンズキン…中田の胸が痛む。ただ悲しかった。涙がこぼれそうだった。慣れてる、僕は慣れてる。そう自分に言い聞かせても、今はどうしようも無い。
中田は席を立つと、全力でかけ出した。
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