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1本。
俺はその日、的前では1本だけしか引かなかった。
いや。怖くて引けなかった。
代わりに巻藁に向かって延々と弓を引いていた。
巻藁室には鏡が置いてあり、自分の射を横目に見ることが出来る。
褒める箇所もないが、言うほど悪い射でもない。
でも何故か矢は暴走し、彼方へと飛んでいってしまった。
それがたまたまなのか、或(あるい)は何かしらの癖が要因となっているのか...。
弓道講師のおじさんは女子に付きっ切り指導。
男子は相手にされていないみたいだ。
話し掛けるタイミングもなく、俺はただ巻藁の前で原因を探っていた。
というよりも、巻藁に逃げていた。
講師のおじさんに指導して貰う際にはきっと的前で引かされる。
だから巻藁は俺の避難場所になっていた。
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