プロローグ

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あの日も、今日と同じ様に綺麗な夕焼け空だった。 大学の校舎の屋上で、手摺りに寄り掛かりながら煙草の煙を、その夕焼け空に向かって、すぅーと吐く。 少しの間だけ目の前は濁った白色をしていたが、すぐに赤色へと変わる。 「白血球って…白いのかな」 ポツリと呟く。 「はぁ?お前、どうしたよ」 隣でしゃがんで煙草を吸っていた美山が顔を顰(しか)めて梶原を見上げた。 「この暑さで頭イカレちゃった?」 「うん。イカレちゃった」 「そうかー。成績優秀な梶原君もイカレちゃいましたか」 大学三年の梶原 幸(カジワラ コウ)と美山 直樹(ミヤマ ナオキ)。 梶原は大学内でも成績は上の上。 その上、顔も良しときている。 一方の美山は名前とは反し、不良面で成績は梶原の真逆である。 何故相反する二人が一緒にいるのかと言うと、小学生からの友人だからなのだ。 「美山には負けるイカレ具合だけどさ」 「何をぅ!?」 美山がタコ口で驚いてみせる。 梶原は思わず吹き出し、持っていた煙草を落としてしまった。 「あぁあ。煙草落としちゃったよ。どうしてくれんの、美山」 「え、俺!?ちょ、ちょっと待て。まだ吸えるだろ…」 そう言って美山は落ちた煙草を拾って、食べ物にするように息を吹き掛けている。 そんな美山を梶原は無視し、手摺りに顎を乗せて赤く染まった空を眺める。 あの日も、今日と同じ様に綺麗な夕焼け空だった。
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