男心と秋の空

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閉じていた目を開けると、目に見えたのは、赤く染まった空だった。 昨日までの私の心は、この空同様、色付いていたのに、今は、どんよりと暗い。 「お前、重いんだよ。疲れた。もう、別れよう」 目を閉じるとまた、頭の中に、リフレインする、つい数時間前まで彼氏だった男の言葉。 今一度、重たくなった瞼をこじ開けると、もうすぐ晩秋だというのに、生暖かい南風が吹き抜けていく。 この風に乗って、遠くにこの気持ち運んでくれたらいいのに。 そう思った時、少し強くなった風が、涙を優しく拭ってくれた。 ここに居ても仕方がないか。帰ろうかな。 土手に下ろしていた重い腰をあげた。
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