男心と秋の空

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制服のスカートについていた泥を軽く叩いて払い落とし、下りてきた階段を戻るべく、振り返った。 さっきまで、行き交っていたカップルも、犬の散歩をしていたおばさんも、元気な声をあげていた小学生も、もう誰一人、いなかった。 その代わり、階段の最上段に腰をかけている男が一人。 私の視力が衰えていなければ、それは、我が校で、最も有名な男で、クラスメイト。 独特な雰囲気と言えば、聞こえはいいが、一匹狼で女はおろか男さえも近づけないという噂の男。 そんな男が、何故か、階段に腰をおろしている。 後ろには、彼が乗ってきたと思われるバイク。 階段を一段上がるごとに、緊張で、体が汗ばんでくる。 虫の音だけが聞こえる静寂の中、私のローファーの音が彼に少しずつ近づくと、頭を垂れていた彼の顔が不意にあがった。
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