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「血、目立つから」
緊張しながらだったから、声も手も足も震えていた。
私の声を聞いても、何一つ反応を示さない彼に、差し出した手を引っ込めて通り過ぎればいいものを、こともあろうに、彼の手をつかみ、握らせた。
「それ、今さっきフラれた彼氏にもらったものだから、捨てていいから」
彼が、手を出さないのは、ひょっとして、返すのに、困るからじゃないかと判断した私は、視線を彼からはずして、悲しい事実というおまけまでつけて、押し付けた。
学校内の噂では、喧嘩は、そこらの暴走族よりも強く、よく売られるとか。
この血も、売られた喧嘩によって付いたのだろう。
無理矢理タオルを持たせた手を見る限り、長く綺麗な手で、とても、人を殴るようにはみえない。
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