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「え…?」
「この場所に時間は存在しない。だからこの夕暮れは、決して暮れないの」
「どういう事だよ?」
「言葉の通りだよ。時のない世界。僕たちに時はもう何の意味もなさない」
セシリアの横に、いつの間にか気付かぬ内に一人の男が立っていた。
俺は知ってる。その男を。
「ロイド…」
「まだ立ち止まってるのか?まだお前がここに来るのは早いだろ?」
振り返ってみたら、そこにはイサールばあさんがいた。
「俺は…」
次の瞬間、視界が暗転する。
まるで出口のない沼の中にいるような、そんな感覚が俺を襲った。
まどろみの中、必死にもがき光を探す。
たがどこにも光もなくて、俺はただその中で、誰かの声を求めた。
「セシリア!ロイド!イサールばあさん!」
暗闇の中に浮遊する体、声だけが周囲に響き渡った。
返ってくる声はない。
一人きりだった。
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