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「誰も…いないのかよ…」
まどろみにたゆたう俺の体。無の世界に朽ち果て消えそうな脆弱な存在。
何もない。
「……けて……助けて……」
そんな0の世界に響いた声に、虚ろな俺は顔を上げた。
「誰だ!誰かいるのか!?」
「痛い……苦しい……」
「な、何だ…?」
聞こえてきた声は、助けを呼ぶ切れ切れな声だ。
遙か遠くに人影が見えた。その人影はゆらゆらと揺れながら、俺の方へと近付いてくる。
「おい!誰なんだ!」
人影が増えた。
一人、二人、三人と次々に増え、やがて人影は数十人にまで膨れ上がる。
「見つけたぞ……ドラゴンブラッド……」
「な…」
その人影が近付いてくると、俺は腰を抜かしてしまった。
「俺の腕が……ドラゴンブラッド……許さない……」
「体が…体が燃える……。熱い…熱い…」
「私の家族を返して。私の夫を返しなさい!」
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