一章 夢から覚めて

7/27
前へ
/292ページ
次へ
周りを見渡してみても誰もいないし、音も完全に消えた。 俺は再び強い孤独を感じる。 それと同時に、右手に妙な感覚を覚えた。 ふと右手を見てみる。 「うわっ!」 手は真っ赤に染まっていた。それはまるで血のような、濃い赤。 ふと左手も確認してみると、そこにも同じ様な濃い赤が付着していた。 両手だけじゃない。腕にも肩にも胸や足にもそれは付着していた。 「こ、これは…」 ふと顔を上げる。 俺の驚きはさらに強くなり、声すらも喉に詰まり出てこない。 まるで地獄。俺は地獄の中に立っているようだった。 ヒトがたくさん死んでいた。 そこら中に数え切れないほどの死体が転がっている。 俺の体に付着したような濃い赤を、その体から吐き出したまま。 「お前は死を背負わなければならん。私と同じように」 そんな中に一人立って、俺に話しかける男。
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

774人が本棚に入れています
本棚に追加