序章:運命を曲げる腕輪

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一軒家の倉庫の中、埃を吸わないように口にマスクを着けて作業をする少年がいた。 「ケホッケホッ!うーん、魔道具はもう無いのかなー」 魔道具、現代社会において存在してはいけないそれを真剣に探す少年がいた。 現代に生きる魔法使い、谷田川 悠吾(やたがわゆうご)。 彼の一族は代々魔法使いのため、あってはならない道具が存在している。 しかしその大半は封印が施され、持ち出しは厳禁だと聞かされている。だが彼の好奇心は、しきたりなんてものを遥かに上回った。 ほとんどの魔道具の封印は彼によって解かれているが使用された事はない。悠吾には魔道具の使用方法を知る術はないからだ。 封印を解いて早く一人前だと認めてもらいたい。その間違った一心で先人が封じた禁断の道具を解放している。 「おっ、これはなんだろ?」 棚の裏から魔力を感じて確認してみると、四角の箱が落ちていた。封印も劣化していてほとんど意味を成さず、普通に手に取り開ける事ができた。 「……腕輪?」 赤い宝石の付いた銀の腕輪。独特の魅力を感じ、悠吾は腕輪を手首に嵌めた。 すると、腕輪が輝き薄暗い倉庫が光で満ちる。悠吾が驚く間も無く、さらに奇怪な現象は起る。 パソコンやテレビなどの電化製品、ベッドや勉強机などの家具、といった悠吾の所有物と今までに封印を解いた魔道具が壁をすり抜けて腕輪に吸い込まれた。 「は……外れない!?」 得体の知れない恐怖心を抱き腕輪を外そうとした時にはもう遅かった。魔道具である腕輪の効果が発動し、不安に押し潰されて泣きそうになりながらようやく悟り、そしてくいた。 今までの自分の行為の間違いを。 倉庫を飛び出そうと扉に手をかけた瞬間、一層光が強くなり、何も見えなくなる。 光が収まり辺りを認識できるようになった時、倉庫には誰もいなかった。
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