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「ここ……どこ……」
悠吾が目を覚ますとそこは倉庫ではなく、暗くジメジメとした森の中だった。木々が生い茂り日光は地面まで届いていない。
辺りを見回しても植物しかなく、人はおろか生き物の気配すらしない。
(この腕輪……もしかして瞬間移動でもする効力でもあったのかな?それとも幻覚とかか)
腕輪に触れるが、なんの変化もない。
「……とにかく移動するか。気のせいか頭痛くなってきた」
しばらく歩き始めて二時間が経過した。しかし一向に景色は変わらず精神的にも肉体的にも疲労が溜まってきたのでは木に背を預けて休む事にした。
「もう……無理……はあ……はあ……この森……一体どれだけ広いんだ……歩いても歩いても抜けられないなんて」
魔道具の封印なんて解くんじゃない。帰ったらすぐに元に戻し、父に話そうと考えていたら背後から足音が聞こえる。
「あら、こんな所に普通の人間?貴方そんな所で何をしてるの?」
足音がした方に顔を向ける。そこには毛先がウェーブかかった金髪で肌が白く、まるで人形のように端正な顔立ちの少女がベルトのような物が巻かれた本を持って立っていた。ケープを羽織った肩には人形が乗っている。「ちょうど良かった……歩いても歩いても森から出られなく――」
「貴方すぐ木から離れてこっちに来て!!」
「えっ……うわあっ!!」
悠吾の言葉を遮って彼女は言葉を放つが、すでに遅く、悠吾の体は宙に浮いて頭が下になり世界は反転していた。
急な事ではあったが彼の思考は驚くぐらい澄んでいて容易に状況を整理できた。
足に木の蔓が巻きついて悠吾を吊し上げていた。たが、驚くべき事はそこじゃない。信じられない事にその木は大きな口が開いていた。
(この木……生きてる!?
魔草の一種?……でも魔草はとうの昔に絶滅したんじゃ)
「お願い上海!!」
少女が手を前にかざす。肩の人形が動いて赤いレーザーを放ち、悠吾を吊し上げている木を貫いた。生きた木は断末魔のようなうねり声を上げ、悠吾の足を縛り付けていた蔓を緩めた。
悠吾は頭から地面に叩きつけられ、体に衝撃が走る。
「いたたた……一体なんなの……うっ!」
「大丈夫……ってわけじゃなさそうね。このあたりは物騒だからうちに来なさい。手当てぐらいしてあげるから」
少女は踵を返してゆっくり歩き出した。右も左もわからない悠吾にはついて行く以外選択肢は無かった。
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