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「そう……そんな事があったのね……」
悠吾は少しでも解決に繋がる事を願ってこれまでのいきさつをアリスに話した。アリスは少し考えて腕輪を見ると思い出したように呟く。
「でもそのアイテムは魔導書で見たことがあるわ。確か様々な物をそのまま保管できる倉庫のような効果の腕輪だったわ」
本が半分しかなかったから全部の効果はわからないけどと付け足すと、アリスはどんな原理で物が保管できるかを説明しようとした。
悠吾は頭痛くなりそうなのでそれを止めて使い方を教えてもらった。
「要は腕輪を触りながら頭の中で出てきてほしい物を浮かべればいいわけだね」
「ええ、ちなみにわかってると思うけどちゃんとその腕輪に入っている物じゃないとだめよ」
(んー、何にしようかな……父さんには禁止されてたけどあれにしよっ!)
腕輪の赤い宝石に指を当て目を閉じ、念じる。手の上に魔法陣が書かれた古い紙が具現化された。
「なに、それは?」
アリスが目を丸くして紙を見ている。悠吾はちょっとした悪戯心が働き、詠唱を始める。
『我と契約せし異種の者よ、姿を現し我が剣となれ』
紙を床に置いてそう叫ぶと、魔法陣から一匹の黒い鱗を身にまとったドラゴンが現れる。しかし大きさは巨大なものではなくて手のひらサイズだ。
「キュー!!」
「これは……ドラゴン!?」
「そう、僕の召喚獣のムドだよ!
……ホントは呼び出しちゃだめなんだけどね」
アリスは恐る恐る人差し指を近づけるとムドは嬉しそうに尻尾を振って両手で指を挟んだ。ムドにとって握手のつもりなんだろう。
アリスは警戒心が解けたのか微笑みながら指先でムドを撫でている。
「召喚獣なんてこの世界にもなかなかいないわ。ねえ、魔道具を出してみてよ。もしかしたら珍しい物もあるかもしれないわ!」
悠吾は言われるがままに腕輪にしまっておいた魔道具を次から次へと取り出した。そして使い方や効果をアリスに教わった。
興味あったけど話せない話題。普段は話せる相手すらまともにいない。しかし今は目の前にいる。悠吾は楽しさで時間の流れも気づかなかった。
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