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「あら、貴方は……そんなところに座り込んでどうしたの?」
「あ……ああ……」
咲夜は優しい声で悠吾に話しかけてたが、体は恐怖に支配されて悠吾は声がうまく出ない。
「ああ、その子なら問題ないわ。目を開けて見てみなさい」
言われたとおりにゆっくりとだが目を開いてみる。
悠吾はさっきのナイフはおもちゃの刺さらないナイフだと何回も頭の中で繰り返し唱えたが。
目に映ったのは頭にナイフが刺さっていてそこから血を流した女性の姿だった。
「ううっ……痛いじゃないですか咲夜さん……」
悠吾があまりの凄惨な光景に気を失いそうになったところで聞き慣れない声が耳に入ってきた。
「なら、仕事中に寝ない事ね。私だって誰彼構わずにナイフを向けたりはしないわ」
咲夜は悠吾の方を向いて微笑んだが、悠吾はイマイチ状況が読み込めないでいる。
「今日はまだ寝てないですよ!!魔理沙に――」
「門をあっさり突破されたのなら尚更問題ね」
チャイナドレスの女性は勢いよく飛び上がり咲夜に抗議する。その際に頭のナイフを抜いて額にのせていた悠吾のタオルを傷口に当てた。
しかし咲夜の対応は厳しく、言葉を遮って再びナイフをちらつかせる。
(……僕のタオルにどんどん血が染み込んでいく……)
「まあ、今日は彼に免じて許してあげるわ。ちゃんとお礼言いなさい」
咲夜はため息混じりに彼女に言い放ち、悠吾に向かって会釈をすると踵を返してお屋敷に歩き出し、数歩歩いたところで彼女の姿が消えた。
「消え……た!?」
「えっと、どこのどなたか存じませんがありがとうございました。おかげでPA……咲夜さんに刺されないで済みました」
彼女は深々と頭を下げその拍子に血の色のタオルが地面に落ちた。
「あっ、コレ貴方のですよね?
ごめんなさい……」
「いいえ、気にしないでください。困った時はお互い様ですから。ところであなたは?」
悠吾は一瞬だが本気で中国という名前かと思ったが、そんな名前の人がいるはずない。
「私は紅 美鈴と言ってこの紅魔館で門番をしてます。あなたは外来人の谷田川 悠吾君でしたよね?」
「……どうして僕の名前を?」
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