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「……悠吾君、手合わせしませんか?」
「……はい!?」
「何を考えているのか知りませんが、ウダウダ考えてるよりも体を動かした方がスッキリする事もありますよ」
そう言って美鈴は悠吾がまだやると言ってないにもかかわらず屈伸運動を始めた。
(でも……美鈴さんの言うことも一理ある。それに特訓にもなるし)
少し強引だと思いつつ、悠吾は魔力を体に流して準備運動を始めた。
「ではルールですが、悠吾君は私の体の手と足以外の部位に二回被弾させたら勝ち。私は悠吾君にまいった等の降参をさせれば勝ち。ただ私は弾幕を出さないで体術のみで戦う。なにか質問や提案はありますか?」
互いに準備運動が終わったところで美鈴が嬉しそうにルールを説明する。門番の仕事はそうとう暇で、こういった事は大歓迎なのだ。
「スペカの使用はどうすればいいですか?」
「ちゃんと宣言してもらえれば何枚でも構いませんよ!」
「……すいません。一枚しかないです……それに、僕は美鈴さんの暇つぶしにもならないくらい弱いですよ……」
悠吾は弾幕を出せると言っても個数も最大で一度に25個しか出せないしそれは連続でできない。弾を大きくしたら三発が限界だ。弾幕ごっこなど到底できない。
「なら、尚更戦いに慣れておいた方が良いんじゃないですか?強くなりたいなら」
「……っ!?」
(そうだ……僕は自分で誓ったじゃないか……まずはアリスに心配かけないくらい強くなるって!!)
「美鈴さん、お願いします!!」
悠吾が深呼吸をして心を落ち着かせるのを確認すると、美鈴はニヤリと笑って石を拾う。
「いい顔になりましたね!……この石が地面に落ちたら開始です……準備はいいですか?」
言い終えた途端、美鈴の雰囲気が一変する。さっきまで気の良いお姉さんだったが、武術の達人の威圧感が体から溢れ出ている。
悠吾は美鈴との距離を30メートル程空けて頷くと美鈴は石を天に放った。
(おかしいな……深呼吸したはずなのに心臓がバクバクする)
悠吾は石を目で追うとゆっくりと地面に降下する。それはまるで動画をスロー再生で見ているようだった。
やがて石は地面に落ちる。それと同時に悠吾は手のひらにそれぞれバスケットボールの大きさの光弾弾幕を1つずつ作り出して美鈴に放った。
だが美鈴は悠吾が弾幕を放つよりも速く動き出していて拳でそれを払いながら接近する。
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