第4章:紅魔館の門番

7/18
前へ
/125ページ
次へ
悠吾は危険を察知して後方に飛びながら弾幕を放つが美鈴は全ての弾幕をさばき、加速して突っ込む。 「はや――」 「遅いです!」 美鈴は蹴りを悠吾の脇腹めがけて放つが、悠吾はそれを腕でガードする。 鉄パイプで殴られたような鈍い衝撃が腕に走る。 しかし悠吾にとってこの近さは好機。空いている手に弾幕を生成して美鈴に放った。 (この密着状態なら外すまい!) 「残念でしたね、私も飛べるんですよ!」 美鈴は片足で地面を蹴ってその勢いを利用して飛び上がる。弾幕は彼女のいた場所を通過して遠くに消えた。 冷や汗が頬を滴り落ちて改めて悠吾は自分の弱さを再度認識する。いくら身体強化で身体能力を上げても彼女と自分ではスピードが段違い、逆立ちしても勝てない。 そもそも魔法使いが接近される事が間違い。 即ち悠吾は一度死んだんだ。 「あの……もう少し手を抜きましょうか?」 「いえ……すいませんが僕は早速スペルカードを使わせてもらいます! 少しでもあなたに力を出させる為に!!」 悠吾も男だ。手を抜かれたままで終わってたまるかと心の中で叫んだ。 ポケットの中からスペルカードを取り出し、天に掲げる。 「魔符『身体超化』!!」 カードが光ると共に悠吾の体に流れる魔力の流れが速くなり魔力の量も格段に上昇した。 (とりあえず……成功だ。これで接近戦という手段ができた) 「……弾幕が飛んできませんが不発ですか?」 美鈴は軽くそう言うが、警戒は解かずに悠吾を鋭い目で見据えたままだ。 「いいえ、僕の唯一のスペルカードは名前の通り身体能力を向上させたものです……身体強化をさらに強化した力で挑ませてもらいます!!」 悠吾は地面を蹴って飛び上がり美鈴に接近する。その際に10個の弾幕を放ち意識をそちらに向けさせた。 美鈴は驚きながらも下から迫る弾幕を蹴りで弾く。 美鈴が驚く事も無理は無い。悠吾本人でも予想外だった。放った弾幕の速度、そして何より自分のスピードに。 「一本目、もらったぁァ!!」 美鈴の背後に回り以前、熊に向けて放ったのと同じ大きさの光弾を叩き込む。 「くっ!!」 美鈴は振り向き様に受け流そうとするが間に合わないと判断し、とっさに腕を交差させてガードする。 弾幕がはじけて巻き上がった煙が晴れて悠吾は確認するが、美鈴の服に焦げ跡や埃こそついたが体には傷一つない。
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加