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体がふわふわと浮いてるようなまどろんだ意識の中、悠吾はなんとなく夢の中だと分かった。そこで誰かの声が聞こえた。
『おい小僧!
私が封じてやった魔道具の封印を解きやがったな!コレクションもわけの分からん世界に持ち去りやがって!』
世界は真っ白で声の主は誰だか分からない。
聞き出そうにも言葉が出ない。一方的に話しかけられるだけだ。その声からは力強い青年のような印象を受ける。
『……何にもわかってないみたいだな。
ふぅん、まあいい。この世界なら大した騒ぎにもならんだろう。せいぜい楽しく暮らすんだな!』
(待って……貴方……は……誰……)
「――吾……起きなさい悠吾。自分のいた世界に帰るんでしょう?」
アリスの声が聞こえて悠吾は目を覚まし、体の感覚も戻った。窓から陽が入ってくるところを見るといつの間にか寝てしまったようだ。
「あれ……僕いつの間に?」
「あの後あなたが沢山出した魔道具の研究中にね。全く、あのくらいでへばってだらしないわね。
さあ、神社まで遠いから早く食事を済ませて出かけましょう」
アリスは準備万端といった様子で、テーブルの上には食事が用意されていた。
悠吾が背筋を伸ばすと背中にかかっていた毛布が床に落ちた。
(これ……アリスがかけてくれたんだ)
「アリス!」
「なに?」
アリスは毛布を拾い上げてたたむと、悠吾と向き合った。
「ありがとう。僕、アリスに会えて良かった。……会えなければ僕はきっと死んでた。本当に助かった。
それに……凄く楽しかった。会話したのも久しぶりだったけど、普段は魔法の事で話せる人なんて」
アリスは急な悠吾のお礼に驚きを隠せず、手に持っていた毛布は落とした。毛布はパサッと音を立てて床に着く。
「べっ別にあっ貴方のためじゃなくて!その……家の近くで死体が見つかったら目覚めが悪いからよ!だからお礼なんて言わないでよね」
アリスは顔を真っ赤にして毛布をしまうと早く食事をとるように促したので悠吾はそれに応じた。
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