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「ぜぇ……ぜぇ……あと…どれくらい?」
悠吾を元の世界に帰す場所、博麗神社という所に向かって歩いて早くも二時間半は経とうとしている。
現代人である悠吾は徒歩という移動手段を舐めていた。体力が無いにもかかわらず最初飛ばしてしまい、既に死にそう。さっきからずっと息切れをしている。
「はあ……だらしないわね……もう少しだから我慢しなさい。
だいたい体力が無いなら無いで身体強化するとか空飛ぶとかしなさいよ!」
アリスは立ち止まり呆れた様子で悠吾を見る。
「いや……身体強化はともかく人間が空飛べるわけないだろ!
てゆうか、なんでアリスはピンピンしてるんだよ」
「私は家を出てからずっと身体強化を使ってるからよ。私はあまり得意な方ではないけれど」
言われてみれば昨日そんな事を話したと悠吾は思い出した。例えるなら悠吾は職業が魔法使い。アリスは種族が魔法使い。しかし悠吾は未だにアリスが妖怪だって事が信じられない。
「それに人間だって飛べるわよ。まあ、とにかく楽をしたいなら身体強化を使いなさい」
(空飛ぶ人間か……幻想郷は何でも有りなのか)
「身体強化か……前に使ったけど僕は魔力少ないから三分持たなかった……んなっ!?」
身体強化、読んで字のごとく自身の身体能力を向上させる魔法。悠吾もこの魔法は幼い頃父親から教わっていた。
少しでも楽をしたい悠吾は頭の中で呪文を詠唱し、体に魔力を流すと綿のように体が軽くなる。しかもまだ魔力は少量しか流していないのにも関わらずそれだけの効果を得られたのに驚きだ。
「なに言ってんのよ。貴方が魔力少ないなんて有り得ないわよ?
あれだけその腕輪からアイテムを出し入れしてたんだから。
それだけでも相当な魔力を消費するはずなのにあなたはちっとも疲弊してない。だからあなたは多くの魔力を持っているはずよ」
アリスは当然と言うように説明する。
「いや……でも以前とは圧倒的な差があるし、何か違うんだ。まるで自分じゃないような」
「うーん……もしかしたらその腕輪の影響かしら?
本で見たと言っても効果の半分は分からないわけだし」
(そう……なのかな……。でも身体強化なら実用的な魔法だから得だと思えばいいか)
しばらくアリスと雑談しながら歩いているうちに神社まで着いた。
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