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悠吾は改めて身体強化が使えて良かったと思う。使えなければ神社までの長い階段で間違いなく死んでいただろう。
「せっかくだからお参りでもして行こっかな」
「ここの神社は何も祀ってないわ。でも、お賽銭入れたら巫女も出てくるからいいんじゃない」
そんなインターホンみたいな役割がある賽銭箱があるのかと思いつつ、腕輪から財布を取り出して中を見る。
悠吾は刺さるような殺気にも似た痛いくらいの視線を感じた。
「ご……五百円玉しかない……いやそもそもこの世界の通貨ってなに!?」
「そっちのお金を換金してくれるところが在るから……あきらめなさい」
上海はポンポンと悠吾の肩を叩き、アリスは半ば哀れみにも思えるような目で見ている。
ちくしょう、まさか賽銭ごときに五百円使う事になるとは。
賽銭箱に五百円玉を放り投げるとゴトッと底に落ちた音がした。
「いらっしゃい!よく来たわね、お茶でもいかが?」
それと同時に勢い良くどこからか紅白の巫女服を着た女が出てきて両手で悠吾の手を握った。その巫女服は少しおかしく腋が露出している。
「えっと……僕は谷田川 悠吾って言います……博麗神社の巫女さん……ですよね?」
「そうよ、私は博麗 霊夢。正真正銘この神社の巫女よ」
霊夢は敬語なんて必要ないと付け足すとご機嫌そうにそのまま手を引いてどこかに悠吾を連れていこうとした。
埒があかないため目でアリスに助けを求めると、苦笑しつつ頷く。
「相変わらずお金に困ってるのね霊夢。お願いだから少し落ち着いてちょうだい、仕事よ」
「あらアリスじゃない。お金が無いのは妖怪が入り浸ってるせいで人間が参拝に来ないからよ。
仕事ってのは?」
アリスはやれやれといったように手を広げる。
「まったく……外来人の彼を外の世界に帰してあげて」
「はぁ、また紫の仕業ね……わかった、準備するから奥で待ってなさい」
霊夢はそう言うと本殿に入って行った。
「じゃあ時間かかるみたいだし行きましょう」
「……変な巫女さん」
ボソッと呟いてアリスの後をついて行った。
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