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振り返るが誰もいません。
あるのはスリッパだけです。
Kは次第に気味が悪くなり、トイレに向かう足を速めました。
その直後、ダダダダダと足音がKに向かってきて走ってくる音が聞こえてきました。
Kは恐ろしくて、後ろを振り返ることができずそのままトイレに逃げ込みました。
トイレに入り、すぐに手前の個室に入り鍵をかけると、足音がKの方に近づいてきました。
足音はギギィ~と音を立て、トイレに入ってきました。
そこで足音がピタピタと音が変わり、Kのいる個室に近づいてきました。
Kは声を必死に抑え、近づく足音に神経を集中させ、そしてついにその足音の正体を確認しました。
トイレのドアの下に空いた小さな隙間。
そこからさっきのスリッパが顔を覗かせていたのです。
スリッパはピタピタと足音を響かせ、Kのいる個室の前で止まると「ドンドンドン」とドアを叩きました。
Kは目を瞑り、必死にそのドアを叩く音に耐えました。
しばらくすると音はやみ、スリッパも消えました。
ほっとしてドアを開けると、ドアには……。
血の手形が溢れかえらんばかりについていました。
そしてKの後ろにはスリッパを履いた血だらけの足が……。
そこでKは意識を失い、翌朝部員達によって助けられました。
後日旅館にそのことを聞くと、昔この旅館で足の悪い女性が働いており、その女性はそのことで周りからいじめられていたそうです。
そしてそれを苦にトイレで自殺を図ったとのこと。
その後からトイレの近くをスリッパだけが勝手に動き回るようになったそうです。
また今でも悪い足を引きずるようにしてスリッパで床をすり足で歩いているそうです。
それからというもの、Kは家にスリッパを置かなくなりました。
もし、夜中にスリッパが一人でに動き出したら……。
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