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「あ、有難うございました・・・。」
「痛くないですか?」
「は、はいっ。」
姫咲えみるに連れてこられたのは、すぐ近くにあったビルの一室。
綺麗なお姉さんに手当てされて、緑は緊張しながら姫咲えみるに礼を言った。
姫咲えみるは、酷くなくて良かったと可愛い笑みを浮かべている。
姫咲えみるはとても可愛いんだけど、何か引っかかる。
この違和感は何だろう?と首を傾げていると、姫咲えみるから声をかけられた。
「じゃあ、朱音くん。この書類にサインしてね!」
「あ、うん・・・って!?」
流されそうになったが、寸での所で止まった。サインって何!?
姫咲えみるから、舌打ちが聞こえる。
その紙をよく見れば、千葉国の為に能力を使い戦う事を契約するものだった。
いやいや、何でそうなる。
「いや、無理なんだけど。」
「えみるの為にだめかなぁ・・・?」
「うぐっ!」
姫咲えみるが大きな瞳を濡らして、こちらを見つめてきた。
何か、言う事を聞かなきゃいけない気がするのは何故だ。
「朱音!」
「あ、いや無理!戦える訳ないじゃん!」
「でも、サインした方がいいと思うよぉ?」
「・・・どういう事ですか?」
緑が何かを感じたのか尋ねれば、姫咲えみるはにっこりと微笑んだ。
「あの能力者は埼玉の能力者なんだよ?何処にも所属してない能力者が倒したってなったらどうなるかなぁ?」
「それって・・・!」
今の自分がどんな状況なのか、理解した。埼玉からの報復や、捕まる可能性だってある事に気付いてしまった。
「でも、朱音は僕を助ける為に・・・!」
「証拠がないし、信じてくれるかな?」
信じて貰える可能性は低いだろう。
これが神奈川だったら良かった。幼なじみが証言者になってくれるのに。
「どうする、朱音くん(一つしかねえよなぁ?)」
聞きたくない幻聴まで聞こえた。
・・・現実逃避だけど。
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