38人が本棚に入れています
本棚に追加
心臓の鼓動、血液の循環、呼吸の波、骨の生成、細胞の死滅、さまざまなリズムだけが、彼の世界のすべてだった。
それは美しい心であり、あらゆる言語も、情景も、音楽も、匂いも、味も、感触も、なにもなかった。
そこにあるのは、純粋な自分自身の生命だけであった。
彼は生きていた。
「××くんは、まだ帰らないの?」
ふと、思案に耽っていた僕は、声をかけられた。
振り返る。
クラスメイト、女の子、呼び名は委員長、茶髪のロングヘアー、ミニスカート、赤いフレームの眼鏡、知的な顔立ち。
放課後の教室には、僕たち二人だけだった。
最初のコメントを投稿しよう!