水無月 問題編

5/24
前へ
/102ページ
次へ
「帰らない。 帰りたくない。 というか、歩くの面倒です。 ……委員長は?」 「迷い中。 どちらかと言えば帰りたくないかな」  言いながら、委員長は僕の隣の席に座った。 「なんで帰りたくないの? 親と喧嘩?」  うーん、と眉間を寄せる委員長。 「おしいねー。 親と喧嘩じゃなくて、親が喧嘩。 巻き込まれたくないからさ」  ああ、そっちのパターンか。 よくある話だけど、深刻なこと。 「よく一年中、言い合ってられるよね。 飽きないのかしら?」 「日常になってるからじゃない? 喧嘩してる状態がデフォルトなんだよ」 「デフォルト?」 「ニュートラルって言った方が正解かな?」 「ああ、そういう意味ね。 確かに、あれが当たり前になってるわ、あの人たち」  彼女は嘆息した。 夕焼けに照らされた教室に、物憂げな彼女は、まるで一枚の絵のようだった。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加