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「だから、僕はずっと悲しかったんだよ。
誰かが死ぬ度に、誰かが離れていく度に、誰かが怒る度に、誰かが悩む度に、僕は悲しかった。
そして、何一つ納得できないまま、何一つ理解できないまま、どうやら僕は死んでしまうらしいから」
それが、悲しいんだ。
そう呟いた。
××は、目を開けて、月を見る。
朧月は、相変わらず彼を照らしていた。
「いいんだよ。
でも、悲しいけど、これで最後だと思うと、楽なんだ。
これでもう何かを理解しようとしなくて良いって実感すると、僕は酷く安心してるんだ。
これでもう何かを分析しなくて良い、これでもう何かを読解しなくて良い、そう考えると、僕は酷く――解放された気持ちになる」
解放された――気持ち。
だとしたら、××を縛っていたものは、××自身なのかもしれない。
それは、なんとも悲しい事だった。私まで、悲しくなってしまう。
その事を彼に伝えたら、彼は笑って言った。
「なんで悲しいかなぁ……。
また、分かんない事が増えちゃったよ。
あーあ、悲しいな……」
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