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旅館に戻ってから一時間後、生徒たちは夕食を終え、就寝準備のため各部屋に散らばっていた。
遥は自分のカバンを漁り、食後のデザートになりそうな物を探している。
遥(持ってきたお菓子はバスの中で食べ尽くしたか……しょうがない、買ってくるか)
走りには自信がある遥は、入浴までのわずかな時間に近くのドラッグストアまで走ることにした。
食後とは思えないほど軽やかに走りあっと言う間に店に到着する。
店内に客は少なかったが、ふと薬コーナーを見ると知った顔が棚を見つめていた。
遥「犬飼? 何してるんだ、風呂まで時間が無いぞ?」
源「うえっ!!? な、なんだ聖水か」
遥が声をかけると、源は不自然なほど飛び上がって顔を背けた。
源「だ、男子は女子より入浴時間が遅いだろ」
遥「ああ、そうか……ん? 今、目が充血してなかったか?」
遥が一瞬だけ見た源の目は、店内の蛍光灯の青白い光とは対照的に赤みがかっていた。
源「あ、ああ、だから目薬探してんだ。 えーと目薬目薬……」
目薬を探しながら店の奥に進んでいく源。
遥「ふーん。 ま、お大事にな」
そう言うと遥は近くの棚にあったお菓子を大量に抱え込み、レジに向かった。
源(アブねぇアブねぇ……)
源は冷や汗を拭って微かに笑みを浮かべ、目薬ではなく睡眠薬を見つけて手に取った。
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