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翌朝、教室は昨日の番組の話題で盛り上がっていた。
話に夢中で俺が来たことに気づかず、俺の机に座って話している男がいる。
「おい、そこ俺の席だけど」
「あ? おはよう睦月」
睦月は俺の名前。ちなみに名字は高橋だ。1月に生まれたからこの名前をつけられた。
「とりあえずどいて」
「ああ、悪いね。ところで昨日のテレビ見たか?」
「いや、見てない」
億劫だから嘘をついた。俺は人とのコミュニケーションが苦手だ。だからこうやって出来る限り会話を避けている。
「ふうん。何か昨日の夜にさあ。神田先生がテレビ出演してたんだよ」
「興味ない」
「なんだってなー」
登校完了時刻が過ぎ、担任教師が教室に入ってきた。
「ほら、座って」
生徒たちが急いで自席に着く。
「おはよう。もうわかっている人が多いと思うが、神田先生が超音波で動物を操るという実験を成功させたんだ。それで急遽今日の1時間目は生物の研究授業になった。ショートホームルームが終わったらすぐ生物室に移動してくれ」
ざわめく教室内。
「じゃあショート終わるぞー。礼」
俺は脇目を振らずに生物室へ向かった。
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