おにごと

6/6
前へ
/69ページ
次へ
──ちりいいん ─ちりいん 愛の説教中。 不意に高い鈴の音が鳴り響く。 この鈴の音は芙蓉の思考と関係がある。 四神の力を必要とするとき、彼らに聞こえるのだ。 芙蓉が必要とするものを黒い蝶が呼びに来る。 そして屋敷の奥にある門を通り人間界へと向うのだ。 (俺であれ…!!) 朱雀は喚ばれてるのが自分であることを願った。 そうすればこの場から逃げられる。 ひらひらと頼りなく飛ぶ黒蝶。 (最悪青龍で…) しかし悲しいかな、蝶が止まったのは彼の隣、白虎の肩だった。 「ぃよっしゃー!!」 ぐっと拳を握ると白虎は青龍に言う。 「あお、僕行かなきゃー」 「早く行ってあげなさい」 立ち上がって駆け出す白虎。 足が痺れたのか変な足取りだ。 部屋を出るとき、 ちら、と朱雀の方を見ると彼は小さく言った。 「(ざまあみろ♪)」 「っ、あのやろ!!」 ─がくん 追おうとした瞬間、襟を掴まれ首が偉いことになる。 「君は、まだですよ」 悪気のない笑顔は朱雀を固まらせた。 (あの馬鹿早く俺を喚べ…!!) 虚しい叫びが届くことはなかった。 ─その説教は何でも 白虎が帰ってくるまで続いたとか……… これにて 「おにごと」 了
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加