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「……ぅ……」
気が付くと、私はベッドの上で寝かされていた。
……お腹が痛い。
着ていた質素なワンピースを捲り上げてみると、そこにはいくつもの大きな傷痕があった。
「やっぱり夢じゃなかったのね……」
一人、呟く。
私……、本当に殺人兵器になっちゃったのかな。
私はふと自分の胸に手を当ててみた。
「?!」
――嘘。嘘でしょう?
本来ならそこに在るべきはずのモノが……無い。
どうして……、私、生きていられるの?!
“心臓”が……無いのに。
そう、私の左胸からは、心臓の動いている音がしないのだ。
何度確かめてみても、やっぱり無い。
「……そ、んな……ひどい。ひどいよォ……!!」
私は込み上げる涙を必死で堪える。
――泣いちゃだめ。泣いたら負けなのよ……
それでも、溢れる涙は止まってはくれない。
一粒零れると、後は次々と流れ始めた。
そんな私の耳に、忘れもしないあの男の声が僅かに届いた。
「……七海(ナナミ)ちゃん」
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