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「えーそうなの?」
なんだ、せっかく仲良くなれると思ったのに。数ヵ月でいなくなるのは残念だな。
「うん…。元々学費のタメだったしさ、美容師に絶対なりたいし、給料安くても昼間に仕事しようと思って。」
「そっか。じゃあそれまで、スタイリングもホストの仕事も色々教えてよ。」
「もちろん。俺が店出したら、幸村はサービスしてあげるよ。…つっても、俺の地元の茨城だから、交通費がやばいけど。」
飲み込んだサンドイッチが喉につかえそうになってむせた。
「…っげほ!それは流石にキツイわー!じゃあ柊斗が東京に店出すか出張してきてよ。」
ハハハ、と柊斗は笑う。
「自分の店出すまで、ここら辺の美容院で修行がてら働くよ。出勤前のホストやキャバ嬢のヘアをモッリモリにしてやんよ!」
柊斗の将来の夢について、話を聞いていると、ほっこりした気分になる。
いいなあ、やりたい事に向かって、努力しているその姿。
そういえば、俺の夢ってなんだっけ?
なりたい職業ってあったっけ。
「じゃあそろそろ行きますかぁ。幸村今日は大仏さんの指導はあるの?」
「いや、ないよ。気分的に楽になった!!」
俺は席から立ち上がり、軽く伸びをした。
ふたりでスタバを出て、フレイムに向かって歩く。
他愛もない雑談をしながら歩き、数分ほどで仕事場の目の前に来たとき。
どこからともなく、見たこともない黒い服の大柄な男が、だんだんこちらに近づいてきた。
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