青い香水

10/10
前へ
/423ページ
次へ
「えーそうなの?」 なんだ、せっかく仲良くなれると思ったのに。数ヵ月でいなくなるのは残念だな。 「うん…。元々学費のタメだったしさ、美容師に絶対なりたいし、給料安くても昼間に仕事しようと思って。」 「そっか。じゃあそれまで、スタイリングもホストの仕事も色々教えてよ。」 「もちろん。俺が店出したら、幸村はサービスしてあげるよ。…つっても、俺の地元の茨城だから、交通費がやばいけど。」 飲み込んだサンドイッチが喉につかえそうになってむせた。 「…っげほ!それは流石にキツイわー!じゃあ柊斗が東京に店出すか出張してきてよ。」 ハハハ、と柊斗は笑う。 「自分の店出すまで、ここら辺の美容院で修行がてら働くよ。出勤前のホストやキャバ嬢のヘアをモッリモリにしてやんよ!」 柊斗の将来の夢について、話を聞いていると、ほっこりした気分になる。 いいなあ、やりたい事に向かって、努力しているその姿。 そういえば、俺の夢ってなんだっけ? なりたい職業ってあったっけ。 「じゃあそろそろ行きますかぁ。幸村今日は大仏さんの指導はあるの?」 「いや、ないよ。気分的に楽になった!!」 俺は席から立ち上がり、軽く伸びをした。 ふたりでスタバを出て、フレイムに向かって歩く。 他愛もない雑談をしながら歩き、数分ほどで仕事場の目の前に来たとき。 どこからともなく、見たこともない黒い服の大柄な男が、だんだんこちらに近づいてきた。
/423ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1005人が本棚に入れています
本棚に追加