1005人が本棚に入れています
本棚に追加
/423ページ
「美里奈は今、大変な事になってます。それに関係してるんですか?」
柊斗は男に対する恐れを隠しつつも、気丈に問いかけた。
「あー、多分関係してますねぇ。こちらも今大変ですからねぇ。」
…第三者の俺からすると、この男絶対適当に答えてると思う。
柊斗が付いてきてくれれば、なんでもいいんだろう。
「柊斗に用があるなら、ここでちゃっちゃと済ませたらいいじゃないですか!」
「…なんだと。」
男が俺を睨み付ける。
こう言っちゃあなんだが、奈良代表よりは怖くない。
もし代表が本物のヤクザだとしたら、こいつはただのチンピラだ。
俺と男の言い合いで、立ち止まってこちらを見る通行人が増えていく。
その中に、見覚えのある人影を見つけた。
小太りの金髪で、くたびれたスーツの男。
…数日前に、俺の足払いを喰らって地べたに顔面強打した男。
零士さんに、美里奈をとっただろとか何とか喚いていた男。
口と右頬の辺りが、赤黒い。
美里奈。
道理で聞き覚えがあると思った。
「てめぇ何ボーッとしてんの?なめてんの?」
「幸村!危ない!!」
何かが空気を切る音が聞こえた。
俺にとっては聞き慣れた音。
この音が聞こえた時は、俺は条件反射で左腕を振り上げる。
パシィン!
乾いた音がした。
俺の左腕に少しだけ、痺れが走る。
最初のコメントを投稿しよう!