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チンピラ男が、俺の顔を殴るか胸ぐらを掴もうとしたんだろう。
なかなかのスピードで突き出された男の手を、俺が腕で弾いた。
こんな時にこそ役立つ、今まで習ってきた実戦と護身術用の空手。
これを使う時が来たとはなー。
弾かれた手を庇う男の顔が、みるみるうちに赤黒くなっていく。
こりゃかなりキレてるな。
「テメェなんの真似だ!ブッッ殺す!!」
スペインの闘牛のように、男が俺に襲いかかってきた!
…ギリギリまで男を引き付け、寸でのところで右足を軸に、体を反時計回りに90度ひねってかわす。
目標の俺を見失ってたたらを踏む男のケツに、軸足を左に変えた右まわし蹴りを零距離で叩き込んだ!
ズシャッ!
男はアスファルトに両膝でスライディングした。
「…ぐぅっ!」
両膝で転倒は免れたはずだが、ひどく擦りむいて地面に膝ついたままは痛いらしく、傷を庇って倒れ込んでうずくまる。
「おっさん、もう帰れや。柊斗に用があるったって、どうせろくなことじゃないだろ。」
俺は再び、小太りホストの方を見た。
「なぁ、あんたの差し金なんだろう!?」
小太りは、ビクッと体を震わせた。倒れていた男は体を何とか起こし、鬼のような形相で俺を睨んでいる。
柊斗も驚き、チンピラ男と小太りホストを交互に何度も見比べていた。
「…美里奈の…元カレ…?」
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