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俺は立っていたところから、そーっと三歩ほど移動して、代表の手元を覗き込む。
…入口の脇に、小さく盛り塩している。
三角に二つ折りの白い紙から、サラサラと塩が砂時計のように流れて行く。
…この人、本当にホストなんだろうか。
「おめぇ、腕っぷしはなかなかみてぇだが、ただそれだけの若造だろ。安易にチンピラとケンカすんな。」
「…はい。」
右足の脛に、チンピラのケツがめり込んだ感触が蘇る。
「金も権力も頭もねぇ。下手すりゃ報復される。…あーいう時はな、すぐワシを呼べばいいんだ。」
「はい。わかりました。」
確かに、武力行使で速攻解決してたしな。
しゃがんでいた代表が、ゆっくりと立ち上がった。
「もう、行け。朝礼に出ろ。ワシも戻る。」
代表はドアを開けて、店の中へ入っていく。
「代表、すみませんでした!」
俺の言葉に代表は振り返ることなく、ドアも閉められた。
二、三度深呼吸して、俺も店の中に戻った。
店の中はボチボチと、出勤してきたホストや内勤たちで賑やかになってきた。
「はーい、集合!朝礼すっぞー。」
あれ?今日は佐藤さんじゃないんだ。まだ柊斗と話してるのかな?
みんな、デカいシャンデリアの下で待つ内勤のところに集まる。俺もそこに向かった。
内勤の話を聞きつつ、事務室のドアをチラッと見るが…一向に開く気配はない。
何長話してるんだろうな?
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